第 3888号2023.08.20
「3年前の約束」清水 愛子
3年前、私は修学旅行で大阪を訪れた。 高校2年生の秋だった。 女子3人組で大阪城の周りを歩いていると、突然小学生に話しかけられた。 半袖半ズボンを着る彼らの緊張した面持ちに、思わず微笑ましくなった。 「とくしまけんから来ました!お話をしてもいいですか?」 数いる観光客の中から私たちに話しかけてくれたことが嬉しく、すぐに 承諾した。聞いてみると、地元徳島県の魅力を発信すべくインタビューを しているらしい。 少し後ろの方では先生と思われる女性が優しく見守っている。 「徳島県と言えばどんなイメージがありますか?」「すだちとかかなぁ?」 和気藹々と会話をしていると、最後に徳島県のすだちですと言って、すだち を3つくれた。型紙を切り抜いた手作りの葉書もくれた。何よりも嬉しかっ たし、温かかった。 そこには手書きで小学校の住所書いてあった。すだちを食べたら必ず葉書を 出そう、私は心にそう決めて修学旅行を終えた。 帰ってしばらくしてから、私は葉書を出した。 「すだち、秋刀魚にかけて美味しく頂きました。いつか必ず、徳島県を訪れ ますね!」こんなにも素敵な出会いがあるのか。一期一会とはこういうことか、 と気付かされた出来事であった。 葉書に書いたあの言葉は、私にとっては社交辞令でもなんでもない、必ず叶 えたい大切な約束だった。 あの頃の小学生は小学校を卒業する頃だろうか。 私は大学2年生になりました。 そしてこの夏、徳島を訪れます。 思い返すと、あの頃はマスクもしていなかったな。 もう少し、早く行けるはずだったかもしれないな。 この3年間で沢山のことが変わった。 楽しいことも苦しいこともあった。 それでも、こうして少しずつ世の中は進んでいく。 この夏、徳島に行きます。 あの頃の約束が果たせますように。 巡り巡ってまた何かに出会えるそんな素敵な旅になりますように。