第 3873号2023.05.07
「ミニバッグ紛失事件」仲途 帆波(ペンネーム)
妻の実兄夫妻が埼玉県のシニア主体の合唱団で活動している縁で、 時々私たちも参加しているが、先日も草津温泉旅行に同行した。 高崎で駅弁を買い車中で美味しく食べて、草津に着いたのは1時半 だった。 しばらくして女性4人が入ったホテルの部屋から、妙な話が伝わっ てきた。 帰りの乗車券やカード類を入れた、ミニバッグが無くなったとの こと。その当人は何と義姉だった。義姉は喜寿を迎えたばかりだ から、私より8歳も若い。 実家の女主人として立派に采配を振るっており、とてもボケとは 縁がないから意外だった。JR駅からのバスや、ホテルの送迎バス を調べてもらったが、忘れ物は無かったという。幸いキャッシュ カードの悪用はなかったが……。 夕飯は懐石料理で中々美味だったが、義姉は味わうどころではな かったろう。食後部屋の中に必ずあるに違いないと、4人で再度 探したところ、あった! 動かすのも一苦労の大型椅子の陰に、ひっそりと置かれていたら しい。 一件落着で、私もその朝の失敗を話すことにした。 さて出発の3分前ふと気になり、往路の乗車券を確認したところ 見当たらない。 財布の中には復路の乗車券だけ、SUiCa入りのケースにも無い。 顔面蒼白を隠して覚悟を決めた。SUiCaで入り吾妻線の車掌に清算 してもらおう。 妻に何と言われても耐えるのみ、玄関で何げなく胸ポケットを 触ってニヤリ、競馬で万馬券を取ったような気分だった。妻には 話さずに済んだ。 こんな失敗を防ぐには、電車の運転士の発声「出発進行」をまねて、 「今日の切符は胸のポケット」と声を出すのが、効き目があるら しい。 「やってみせてよ」の声に、大声で実演し喝采を浴びた。