第 3405 号2014.04.27
「 小さなファインプレー 」
みゆずきほ(ペンネーム)
ソチオリンピックでは数々の名勝負、ファインプレーが私たちに感動を与えてくれた。あのチームの一員になるのは難しいが、小さなファインプレーは、私たちにもできる。
先日、私は電車でつり革にもたれて、本を読んでいた。すると後ろで「ドサッ」っと音がした。振り返ると二人連れのご婦人のうち一人が座り込んでいる。気分が悪いようだ。すぐにご婦人の向かいの男性が席を譲り、となりに立っていた男性が「お手伝いしていいでしょうか」と声をかけ、ご婦人の体を支えた。ご婦人は、あまり反応せず、連れのご婦人のいうことにうなづく程度。私が緊急停止ボタンを押すか迷った刹那、電車はホームに滑り込んだ。
ドアがあいた。私は駅員の姿を見つけた。しかし、電車を遅延させず発車させようとしていて、こちらに気付かない。私は普段あまり大きな声を出せない。だが、集中して息をすいこみ、大きな声で「駅員さん、駅員さん!!」と呼ぶと、気づいてこちらに向かってくれた。
男性がご婦人を支えながら電車から降ろしている。そして、別の女性客が、「私はこの駅でおりますから、あとはやりますよ」と引き受けてくれた。
こうして電車は遅延することもなく、ご婦人たちも無事降車することができた。あとは女性客と駅員さんが救護室へ向かってくれるだろう。ご婦人の回復を祈るばかりだ。
車内は何事もなかったように、いつもの風景にもどっている。
私は心の中で関わった人たちとハイタッチをしながら、小さなファインプレーをしたチームの一員の気分をかみしめた。