第 3387 号2013.12.22
「 ゆたんぽ袋。 」
由布子(ペンネーム)
デパートの家庭用品売り場に「湯たんぽの袋」が出ていた。フリース生地のそれは、花柄あり、動物柄ありで見ていても心が和む。湯たんぽは最近の省エネや、スローライフといった生き方にマッチしたらしく、今また、人気だ。また、と書いたのは若い人は知らないだろうが、湯たんぽは私たちが子供のころは当たり前の存在だった。ブリキでできていて、確かバスタオルでくるんだりして使っていた。
私には使うこと以外にも思い出がある。それは母が湯たんぽの袋を作る内職をしていたからだ。ミシンが得意だったから始めたのか、多分働き者だったから家事や4人の子育ての合間に家計の足しにしよう、と考えたのだろう。袋の生地はネルだった。当時は一番暖かく感じるものだったと思う。湯たんぽ用に裁断された生地を自転車で町内のまとめ役の家にもらいに行き、出来上がると届けていた。持っていく前に、10枚ずつ束ねるのだが、私はそれをよく手伝った。私が小学校に上がるか上がらないかの頃だ。母は、「ありがとう、あんたは間違いなく数えられて偉いね、助かるよ」と、ほめてくれたので私は言われなくても手伝った。人の役立つことをするのはうれしいこと、と学んだ最初のことのように思う。
この冬、足が冷たい夜には私も湯たんぽを使ってみようかな、と60年も前の昔に思いを馳せながら思ったことだった。