第 3162 号2009.08.30
「 月あかりの虹 」
渡辺 礼比子 (横浜市金沢区)
三年ほど前、ハワイ島へ旅行したときのことです。
私たち家族はガイドさんの車でキラウェア火山へでかけ、昼間は巨大な火口をのぞき、夜は夜で、遠くからではありましたが、赤い溶岩が海に流れ込む様子を、確かめることができました。
でも、実は、私としては、この日ちょっとがっかりしていたことがひとつあったのです。せっかくハワイ島へきたのに、ちょうど満月の日にあたっていたため、一番楽しみにしていた満点の星空を見ることができなかったのです。でも、とにかく一日の観光を無事おえることができたのだし、まあ、よしとするか、と帰りの車の中で話していた、その時でした。
不意に、車の前方に不思議な風景が広がったのです。車を停めてよくみると、溶岩大地の夜空に大きくアーチを描いて、青白い虹がかかっているのでした。まるで夢をみているよう!誰もものもいわずにしばらく空をふり仰いでいます。なにかちょっとこわいような、神秘的な美しさでした。
ガイドさんの話しによれば、これは満月の頃だけにあらわれる<月あかりの虹>というもので、見ようとしてもなかなか出会えるものではなく、この虹を見た人は幸せになれるという言い伝えもあるとか。
考えてみれば、星の見えない満月の夜だったからこそ、私たちはこんなファンタスティックな体験をすることができたのでしょう。
~~思いどおりにならないからこそ、旅はおもしろい~~
キラウェアの旅以来、こんなフレーズが心にすみつき、いつも次にゆく気ままな旅に思いをはせているわたしです。