第 3707 号2020.2.9
「息子のバレンタイン」
すみれ(ペンネーム)
幼稚園の息子がバレンタインのチョコを頂いてきた。
もらう時の「ありがとう」はうつむき気味の小さな声。 これではお礼の気持ちは届かないだろうと帰ってから手紙を書 かせてみることにした。 チョコは大事そうに食べていたが、手紙は気が進まないのか何度 か書き直しをした。「おいしかった」が「おいしかた」に気づい ては直し、まだ読みやすい字ではないが、女の子に渡す機会を待 った。 数日経ってもなかなか私がいるタイミングで会えなかったので、 息子にどうするか聞いたところ、自分で渡すという。 普段なかなか行かない隣のクラスでもあり、本当に渡せるのだろ うかとも考えたが、彼に任せることにした。 幼稚園からの帰り、渡せたか聞くと「渡せた~」というので、半 信半疑ながらいると、偶然女の子のお母さんと一緒になった。 「手紙もらったよ~」の声に安心したのもつかの間、なんと女の 子の通園リュックのポケットに勝手に手紙を入れたそう。最終的 には、もじもじしていたのか、先生の手助けもあり、女の子にも 声をかけられたそう。 渡すように伝えていたはずなので、なぜこんなことをしてのか聞 いてみたら、どうやら恥ずかしかったらしい。 良くなかった行動は注意したが、必ずしも積極的とはいえない 息子が自分から動いてくれたことを思うと、涙が出た。 ホワイトデーのお返しは、どんな風に渡すのだろう。 また新たなドラマを見せてくれるのだろうか。