第 3706 号2020.2.2
「節分」
一休さん(ペンネーム)
今年も、あと1週間ほどで節分がやってくる。別に何をするわけで
もないのに嬉しいような、何かほっとする気持ちになる。小寒、大寒 も何とか乗り切って立春ももう間近だ。今年流行しているインフルエ ンザにもかからず冬を越せるかもしれない。暖かい陽だまりでは早く も、フクジュソウ、セツブンソウ、ヒヤシンス等の花々がほころび始 めている。 まだ、子供達が小さかった頃、我が家でも人並みに「豆撒き」をし た。家中の雨戸を開け放して、「鬼は外、福は内」と大きな声をあげ ながら鬼の豆をまいた。居間に豆をまく時には、部屋を暗くして、豆 だけでなくチョコやキャラメル、ミカンなども混ぜてまいた。子供た ちは歓声を上げて奪いあうようにお菓子類を拾った。ご近所からも、 同じように豆撒きの声が聞こえて来た。私は、豆を肴にして、好きな 日本酒の熱燗を楽しんだ。 それから数十年が経ち、子供達も一人去り、また一人去り、我が家 は妻と飼い犬だけになった。それもで「豆撒き」の習慣は止めなかっ た。しかし、年々、ご近所からの豆をまく声も聞こえなくなり、何と なく気勢が上がらなくなった。昔の様に、威勢よくまくのではなく、 静かに、軽くすませるようになっていった。それでも犬は喜び、豆を 拾っては食べたりしていたが、その飼い犬も亡くなり数年が経つ。そ して、ついにこの2、3年我が家では全く「豆撒き」をしなくなって しまった。 節分の豆撒きという習慣も、だんだん忘れ去られ、神社仏閣や保育 園等だけで行われる行事になってしまうのであろうか。現代の日本で は、お父さんも、お母さんもとても忙しくて、夕飯時にもなかなか家 に帰れない。例え、帰って来ていたとしても、家族がそろって夕飯の 膳に向うことは少ないようだ。豆撒きの習慣が家庭から消えてゆくの も時の流れなのかもしれないが、鬼さん達は、きっと寂しい思いをし ていることであろう。