第 3702 号2020.1.5
「夫と料理」
cherish(ペンネーム)
身内が言うのもはばかれるが、夫は私よりも料理のセンスがあるような気がする。
趣味で釣りに行ったときには、魚を持ち帰り、マイ包丁でさばいて料理する。又、別の時には、手作りのクッキーを作っていた。試行錯誤しながら、味に納得がいくまで何度も焼き直し、できあがるのを楽しみにしていた。 そんな夫の作ってくれた料理で忘れられないものがある。 数年前。私がほぼ一日外出して、くたくたになって戻ってきた冬のある日。 ドアを開けて帰ってきたことを告げると、「お風呂にする?ご飯にする?」と勢いよく聞いてきた。これではまるで、新婚夫婦のようだ。当の本人は、台所に立って何やら手を動かしている。「ご飯!」と答えると、食卓に、なべ料理が出てきた。びっくり!おまけに人参の形がハート型だったり、星型にくりぬいてある。自分で型抜きでもしたのだろうか。想像するとちょっと微笑ましい。 後から聞くと、鍋セットをスーパーで買ってきたという。なるほど、そういうわけだったのか。 それでも、なんだか嬉しくて心が温まった。 この季節になるといつも思い出す。「あつい。あつい」と言いながら二人で食べたなべのこと。私にとって世界一おいしかった夕食のことを。