第 3645 号2018.12.02
「 リヒトミューレを知っていますか? 」
吉田康則(木更津市)
散歩の途中、時折、立ち寄るアンティークショップがある。年代ものの筆記用具や時計、陶磁器が所狭しと並べられている。童心に帰って、あれやこれや手を出したくなる“大人のおもちゃ箱”と言った風情を醸し出している。
一際目を引くのがウィンドウに飾られた奇妙な形をしたオブジェである。様々な大きさの硝子球で出来ており、数個が団子状に吊るされているものもあれば、脚がついたスタンド式もある。通りがかりの人々も怪訝そうな顔をして眺めてゆく。親しくなった店主に教えを請うた。ドイツ語でリヒトミューレと言うそうである。当初は理科の実験工具として作られたが、現在はインテリアやリラックスアイテムとして使われていることが多いそうである。
硝子球の中で4枚の羽根がゆっくりと回っている。電気の力を借りたり、螺子を巻いたりするものではなく、太陽光や蛍光灯の光に羽根が反応するそうである。只、それだけなのであるが、羽根が回る様子を見ていると飽きない。と言うより、いつまでも見ていたくなるから不思議である。光の種類により、回転速度が微妙に変化する。太陽光だと速く、蛍光灯の光だとゆっくりと言った具合である。
小振りのスタンド式を一つ購入し、自室のデスク横の棚に置いてみた。風鈴を思わせるが、勿論音はしないし、風車のようであるが風の影響も受けない。何かを主張する訳でも何かに妥協する訳でもなく泰然自若然としている。自らのペースを壊すことなく、それでいて受けただけのエネルギーを余すことなく使い切り、悔いを残さないような様が見事である。何故か気持ちが豊かになり、心地良さを感じさせてくれる。組織を離れて暮らすようになった私が願う生き方を教えてくれているようである。世の中には面白いものがあるものである。