第 3480 号2015.10.04
「 わが町のザシキワラシたち 」
ところ こと(ペンネーム)
今年の夏は記録的な猛暑が続いたというのに、秋には彼岸花が咲いていました。
季節は、確実に巡っているのですね。そのことを花々は知っている。なのにボクらは、ついつい忘れています。それだけ、色々な意味で鈍感になっているのでしょうか。
最近は齢のせいか、物思いに耽ることも多くなり、若いころならば「馬鹿馬鹿しい作り話だ」と一喝していた民話や伝承にも、何かしらのメッセージや、人々が蓄えてきた知恵と感慨が、潜んでいるのではないかと思えるようになってきました。
ある休日にぶらりと古本屋へでかけ、柳田圀男の『遠野物語』を、店頭のワゴンにみつけました。ひと夏越したその文庫本は、カバーもなく、すっかり色褪せています。
たまたま開いたのが、ザシキワラシの話。
ザシキワラシは、今なら小学6年生から中学1年生位の、純真な子どもの神様です。長者の家に棲んでいて、たまに目撃されます。噂にも上ります。驚かせたりもします。でも悪い神様ではありません。むしろ、ザシキワラシが出て行ってしまうと、家が傾いたり、不幸になったりするみたいなのです。ザシキワラシとは、未来の象徴なのでしょう。
秋祭りの子ども御輿や、小学校の運動会、まだまだ健在な駄菓子屋。商店街の夕暮れに走り回る子どもたちの姿。これらに出くわすと、自然と笑みがこぼれてきます。こころの豊かさとは、こんな間近にあったのですね。
あいつらがいる限り、この町は健全です。
いつまでも、自分のために頑張るのではなく、未来を担う子どもたちのために、希望を繋げていける今日を、今こそ創ることができたらと思います。
わが町のザシキワラシたちに乾杯!!