第 2898 号2004.08.08
「 アルジェリア・サラダ 」
関 京子(山口県下関市)
小学生だった私が、学習雑誌の付録についていた野菜の種で初めて収穫したのがインゲン豆だった。ほんの少しのサヤを母に天ぷらにしてもらった。その味が忘れられなかったのか、いまだにインゲン豆が好きだ。インゲン豆というと、私には愉快な思い出がある。私の実家の方のお寺では、住職のことを「御院家、」その奥様を「坊守様」と呼ぶのだが、そんなことをまだ知らなかった娘時代の私が親に頼まれてお寺に行った時、奥様が「今、いんげは外出しておりますが。」とおっしゃられたのをいんげんと聞き間違えて、帰りの道で、「住職さんはお豆と同じ名前だ。」と一人で吹き出したのを覚えている。とんだ勘違いである。今、主婦となった私には、私にとって楽しい思い出を与えてくれた、このインゲン豆を使った得意なサラダがある。「アルジェリア・サラダ」といって、ゆでたインゲン豆とトマトとさらし玉ねぎに、オニオン・ドレッシングをかけたものだ。今では到底似合いそうもないピンクのフリルのたくさんついたエプロンをつけて立った新婚の台所で、初めてこのサラダを作った時、「変った名前のサラダだな…」と思った。アルジェリアという国のことも何も知らなかった。それが先日、国旗調べをしていた娘の教科書を見て、永年の疑問が解けた。
アルジェリアの国旗は赤と緑と白の色鮮やかな配色だった。あのサラダの名は国旗の色にちなんでつけられたものだったのだ。私はほったらかしにしていたパズルが解けたような気分になった。今晩のおかずの一品に久しぶりに「アルジェリア・サラダ」を作ってみようと思った。